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産出過程ネットワーク

  次に、産出プロセス自体の持つ難解さを取り上げる。

上記の骨子1、2より、オートポイエーシスでは構成要素の集合の決め方が問 題となる。要素 の集合というとき、集合の範囲は作動によって決まる。そして、集合の要素が 産出プロセスのネットワークを再生産する。

このことが、凡人にとってオートポイエーシスを難解なものにしている。構成 要素の産出プロセスを写像や力学系のイメージで捉える限り、「システムの作 動はシステムの作動の初期条件に先立つ」ことは考えられない。力学系はその 状態軌道が存在する空間を前提とし、初期条件をプロセスと独立に設定してそ の時間発展を問題とする。しかし、 作動の継続を前提とするオートポイエーシスでは、生成プロセスと独立に初期 条件を定めることが出来ない。作動の結果としてしか初期条件が決まらない。

凡人にとっては何よりも、作動の結果が初期条件もしくはプロセスの定義域を 決めるということ自体が想像出来ない。写像は定義域と値域を前提とし、その 出力が関数の定義域を決定することは在りえない。凡人にとって、システムが そこに存在するということは、システムの定義域が固定されていることが前提 であり、先に作動があってその結果により初期条件や定義域が決まるなどとい うことは想像の範囲外である。従って、凡人に想像出来るイメージは、一旦初 期条件が想定され何重ものフィードバックがかかって条件そのものが複雑にな る自己組織化システム、例えば散逸構造などの非平衡熱力学系、もしくはハイ パーサイクルなどの自己触媒系止まりである。これらは、河本が主張するとこ ろの第2世代までのシステムである。



Tatsuya Nomura
Fri Aug 22 19:05:39 JST 1997