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定式化の可能性

  上記の2例がオートポイエーシスの定式化手法として有効かどうかは、現時点 では判別出来ない。

Metabolism--Repair System には確かに作動の結果 (入力 に対する f の出力) が次の写像を決定し、入力が特定の条件を満たしてい る限りは同じ写像が複製される構造がある。しかし、やはり最初に写像の定義 域と値域が与えられて、初めて自己産出のメカニズムが記述される。オートポ イエーシスでは、定義域と値域が作動そのものによって決められなければなら ない。

自己反映計算においては、システムがその作動により自分自身の構造を変化さ せることが出来るが、やはり最初にシステムを定義する言語 L が想定され ている。オートポイエーシスにおいては、言語自体が作動の結果から得られな ければならない。

まず最初にプロセスのネットワークがあり、作動が次のプロセスのネットワー クを決定し、プロセスはシステムの構成要素を産出する。このシステムのイメー ジが数式的に表現されない限り、オートポイエーシスの実現は凡人には不可能 である。



Tatsuya Nomura
Fri Aug 22 19:05:39 JST 1997