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はじめに

最近の人工生命や複雑系と呼ばれる分野の勃興は、数学、物理学、生 物学などの自然科学のみならず、社会科学にも確実に影響を与えている。事 実、経済学では限定合理性の概念を旗頭に、進化ゲームという形で集団にお ける個人の行動選択に関するシミュレーション研究が注目されており、その 影響を受けて昨年から「進化経済学会」が発足し、システムの多様性、組織 の共存・競争の進化機構の本格的研究が進められようとしている。

従来、社会心理学は個人と社会の動的相互規定関係を問題と する学問である。また、社会心理学におけるミクロ--マクロダイナミクスの 観点は、人工生命の基本概念である「創発 (Emergence)」と同じ基本構造 --- 複数の要素間の局所相互作用からの大域的秩序の生成と、生成された秩 序からの要素への制約 --- を有している。

このような状況の中で、筆者はファジィシステム、ニューラ ルネットワーク、 非線形力学系、集団エージェントシステムなどの工学的 研究を通して、社会心理学的集団現象に対する数理モデル及びそれに基づく シミュレーションによる現象解釈、説明の有効性に関して模索を行い、人工 生命・複雑系的手法と社会心理学の相互交流 -- 室内実験の拡張、新たな計 算モデルの発見 --- による発展の可能性を考えている [5]。



Tatsuya Nomura
Fri Aug 22 18:46:54 JST 1997